旧耐震マンションは本当に危険なのか?

中古マンションをこれから購入しようと考えている方であれば、検討しているマンションが「旧耐震マンションなのか?」「新耐震マンションなのか?」を気にされる人も多いでしょう。

当然、旧耐震と新耐震のマンションであれば、新耐震マンションの方が高い安全性が確保できていますので安心です。

しかし、旧耐震と新耐震の境とされている1981年以前に建築されたマンションと、1981年以降に建築されたマンションでは、売り出し価格に数百万円という価格差があるケースも珍しくありません。

旧耐震と新耐震では、本当にこれほどの価格差が生じるほどの違いがあるのでしょうか?

旧耐震マンションの実情

マイホームの耐震性については、生命に関わる問題でもありますし、財産にも大きく関わる問題ですので、ここから先はあくまでも私個人の見解として読んで頂きたく思います。

これは私が不動産会社で働いていたときの話です。同じ地域に2つの分譲マンションがありました。間取りは2棟ともに3DKで、専有面積にも大きな差はありませんでした。A棟とB棟は歩いて2分ほどの距離です。ただ違う点と言えば、A棟が1980年築であり、B棟が1983年築だったという点です。

私が売却査定をしたのですが、築年数の古いA棟がリフォームもしており、こまめにメンテナンスもしていたこともあり1680万円、そして築年数が新しいB棟が内装や設備類が結構傷んでいたこともあり同じ1680万円としました。

人気の高い地区だったこともあり、B棟は売り出し開始から1ヶ月もせずに売買が成立しました。B棟を購入したお客さまは、その後220万円をかけて内装やバス・トイレなど、大幅なリフォーム工事を行いました。

しかし、A棟は売り出しから3ヶ月経過しても、一向に売却がきまりません。B棟に比べ電話での問い合わせもずっと少なかったです。なんとか物件見学までこぎつけても、やはり致命傷となるのが旧耐震構造であることでした。
そこで、売主と相談した結果、売り出し価格を1600万円まで下げました。しかし、その後も思ったように購入希望者からの問い合わせは増えず、1ヶ月後には1550万円まで再度値下げしました。

最終的には値下げを繰り返し、売買が成立した金額は、当初よりも230万円も安い1450万円でした。築年数が1981年以降であれば1800万円でも十分買い手がみつかるほど、程度は良かったので、正直驚きました。

やはりこれほどまでに一般の方は、耐震性能に関してマイナスイメージを持っているのだと再認識することになりました。

旧耐震マンションの安全性能

一般の方は、大地震がくると旧耐震マンションは倒壊するというイメージを強く持っている方が多いようです。しかし、下記の東日本大震災におけるデーターを見る限りでは、必ずしも旧耐震マンションが大地震で倒壊するという根拠にはなりません。

新耐震マンション1233棟のうち
  • 被害なし 630(51%)
  • 軽微   456(37%)
  • 小破   135(11%)
  • 中破    12(1%)
  • 大破    0(0%)
旧耐震マンション227棟のうち
  • 被害なし 108(48%)
  • 軽微    75(33%)
  • 小破    40(18%)
  • 中破    12(5%)
  • 大破    1(0%)

※仙台市内のマンション被害状況

1981年以前のマンションを旧耐震マンションと、ひと括りにしていますが、実際には1971年の十勝沖大地震の際にも、建築基準は大きく見直されることになっており、耐震性も例外ではありません。つまり、ひと括りに旧耐震マンションといっても1971年を境にして、建物の耐震性能は大きく変わっているのです。

「1981年以降に建築されたマンション>1971年〜1981年までに建築されたマンション>1971年以前に建築されたマンション」という3段階の耐震性マンションが存在するわけですが、1981年以前と以降だけで、数百万円という価格差がでるのであれば、旧耐震マンションを格安で購入して、出来る限りの耐震リフォームを検討するという手段もあると思います。



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