住宅に関して「アスベスト」という言葉を聞くと、第一に考えるのがアスベストによる健康被害だと思います。
アスベストとは、天然の鉱物繊維のことで、石綿とも言われています。
一概にアスベストといっても多くの種類があり、大きく分類すると「飛散性アスベスト」と「非飛散性アスベスト」の2種類に分けられます。
「飛散性アスベスト」は、一般的に鉄骨造など、ビルや工場などの建物に使用されており、一般住宅に使用されていることはほぼありません。
主に一般住宅に使用されていたのが「非飛散性アスベスト」と呼ばれるタイプのものです。
この非飛散性アスベストは、防音性能や断熱・耐火性能に優れていることから、古来より住宅の屋根材や外壁材などに多用されてきました。
しかし、2004年以降規制が厳しくなり、2013年現在では発ガン性のリスクが高いことから、アスベスト自体の使用が禁止されています。
アスベストと肺ガン
アスベストの何が危険なのかというと、アスベストを吸引してしまうと、肺ガンを発症するリスクが高いことが証明されているのです。
テレビや新聞のニュースなどでも、アスベスト関連の訴訟や健康被害を訴える番組を見かけることが多くあります。
そのため現在では、「アスベスト=健康被害」というイメージが相当強く印象に残っている人も多いのではないでしょうか?
アスベストと住宅
先ほども書いているように、現在では住宅を建てる際にアスベストを使用することはありませんので、新築住宅を検討している人は、アスベストに対して深刻に考える必要はないと思います。
問題となるのは、中古住宅や中古マンションの購入を検討している人、そして賃貸物件に住んでいる人だと思います。
わたしは、過去に不動産会社で営業の仕事をしていたことがあります。
当然お客様からは、売買・賃貸に関係なく、「この物件ってアスベストを使っていませんよね?」という質問を受けることがありました。
ここでひとつ言わせて欲しい事があります。
アスベストは、確かに発ガン性などのリスクが高く、健康被害への問題が深刻化しています。
しかし、皆さんが思っているように「アスベストを使用している建物に住んでいるだけで、アスベストの被害を受けている」というのは大きな勘違いです。
アスベストは確かに大変危険な物質ですが、一般住宅に使用されていた「非飛散性アスベスト」は、簡単に剥がれ落ちたり、飛び散ることはありません。
問題となっているのは、アスベストを使用している建物で生活していることではなく、アスベストを使用している建物を解体・粉砕する時に発生する粉塵なのです。
この粉塵に紛れ飛散しているアスベストを吸引することで、肺ガンなどの健康被害を受けることになるのです。
テレビや新聞などで取り上げられている、アスベスト関連のニュースの多くは、ビルの解体現場の近くに住んでいた人が解体時の粉塵により、アスベスト被害を受けたという場合、もしくはアスベスト関連の工場で働いていた労働者の方、実際にアスベストの脅威を知らずに解体現場で働いていた労働者の方たちなのです。
つまり、中古住宅を購入するからといって、アスベストの問題を過度に心配してしまうと、ほとんどの物件が多からず少なからず、アスベストを使用していますので、せっかくの掘り出し物件も見逃すことになってしまいます。
アスベストの被害を考えるのは、その建物を解体するとき、リフォーム工事するときなどであり、日常生活においては皆さんが思っているほどの心配は無用だということを理解しておいてください。