こだわって作った住宅はマイナス評価につながりやすい

不動産会社に勤務していた時の体験談なのですが、月に数軒の売却査定に行っていました。

売却査定とは、売却希望という問い合わせを頂いたお客様のところへ行き、実際に物件をみせてもらいながら査定させてもらうことです。

物件の査定はもちろん、お客様の売却希望価格などを聞きとりして、後日に売却予想価格を提示することになります。

こだわりの物件は意外と低査定となる

これは、実際にわたしが査定した住宅の話です。

会社に売却希望という電話が入りました。事務員が電話に出たのですが、査定は私が行くことになり、後日お客様の指定日に自宅へとお伺いしました。

この物件は、すごく立地が良いわけではないのですが、この街では景観が凄く良い地域として、昔からお金持ちの方に人気がある高台です。

建物も築12年(2階建て37坪)ほどで外観も綺麗ですし、真っ白の住宅で清潔感もあります。また、敷地面積は70坪ほどあり、バーベキューができるほど大きな庭があります。

さらに、分譲団地なのですが、角地になるため条件次第では十分に販売可能な物件です。

このお客様は、50代後半のご夫婦だったのですが、来年には定年を迎えるので、住宅を売却して地方でスローライフを楽しみたいというのが売却の理由でした。

気になる購入費用ですが、土地70坪×30万円=2100万円、建物は地元工務店にて坪単価45万円×37坪=約1660万円だったそうです。合計すると3760万円に諸経費まで入れて4000万円ほどだったという話でした。

このお客様と話をしていると、当時3000万円の住宅ローンを組んでいたらしく、残債務として2300万円近く残っていることが判明しました。

わたしの査定では、販売価格で2300万円という提示をさせて頂いたのですが、最終的には値引きなどを考えて、2200万円を切るくらいでの売却になる可能性が高いことを伝えました。

通常であれば、2700万円で売り出せるほどの物件です。しかし、わたしの査定では2300万円。なにがダメだったと思いますか?

査定が下がってしまった理由は、独特な間取りと立地の実用性でした。

このご主人は、自分のライフワークや趣味にこだわりすぎて、独特な間取りになってしまっているのです。

例えば、起床後すぐにシャワーを浴びたいという理由から、バスルームは2階の主寝室の隣にあります。さらに、音楽や映画をみるのが好きなので、中2階に防音設備が整っているシアタールームがあり、1階は36畳という全面リビングダイニングキッチン(LDK)なのです。

この個性的な間取りが売却にあたり、大きなマイナス査定ポイントとなってしまい、通常査定よりも400万円下げる結果となりました。

しかし、ご主人にしてみれば、こだわりにこだわった最高傑作という自慢の住宅です。そのこだわりが低評価されたのですから、面白いわけがありません。

もちろん、売り出し価格は、売主が自由に決めることができますので、どうしても2700万円以下での販売は納得がいかないということもあり、最終的に2700万円で売り出しました。

問い合わせは何軒もあり、2ヶ月くらいで6件ほどの物件案内もしたのですが、一向に決まる気配はありませんでした。断りの理由は、おわかりのように間取りです。

その後、2ヶ月ほどして、1割引きの2430万円まで下げてもよいという、売主からの許可がでたので、物件案内をしたお客様に再度ご提案をしたのですが、結局は契約に至ることはありませんでした。

他人からみれば、外国の住宅みたいで、すごくオシャレな家なのですが、実際に自分たちが生活するとなると、躊躇する人が多いのでしょうね。

不動産を高く売却したければ仲介業者選びが重要! 一括見積もりサイトを使って引越し料金を限界まで安くする方法

  このエントリーをはてなブックマークに追加