空き家問題が益々深刻化しており、国も対策にやっきになっています。その結果、空き家を放置することで税金が6倍に増える可能性が極めて高くなったことをご存知ですか?
これまで固定資産税として毎年10万円収めていた税金が今回の法改正により最大60万円に増える可能性があります。親から相続した実家、たくさんの思い出が詰まっている家なので取り壊したり売却するのは惜しい!なんてことは言ってられなくなります。
そこで今回は空き家を放置することでどのようなリスクがあるのか?また、今後どのような対策をしていけば良いのかを詳しく解説していきたいと思います。
空き家対策特別措置法とは?
まず空き家問題を考えるうえで一番最初に知っておかなければならないのが、2015年5月から全面施行になった新法の「空き家対策特別措置法」です。
この法案は全国的に問題となっている空き家を減らすことを目的に制定されました。昨年度発表された数字によれば全国の空き家数は820万戸(総住宅数6063万戸)となっております。この数字は5年前と比較しても約63万戸増えており、増加率でいえば13.5%にもなります。
さらに今後の空き家率を想定した数字では、20年後の住宅総数は7106万戸、そのうち空き家数が2146万戸となっており、実に3割以上が空き家状態になると予測されているのです。
このように空き家になってしまう住居が増えることを最小限に抑えるために施行されたのが、この「空き家対策特別措置法」という法律です。
空き家が増えると何がダメなの?
「空き家が増えることの何がそんなにダメなの?」と思う人もいらっしゃるでしょう。そこで空き家が増えてしまった場合にどのような問題やリスクがあるのかを想定してみましょう。
損壊や倒壊の恐れ
空き家が増えるとうことは、それだけ地域住民の安全を脅かす恐れが高まるということに繋がります。例えば誰も手入れしない住居を放置したままにすると一番怖いのが「倒壊や損壊」の恐れです。日本はご存知のように世界的にみても台風や地震大国だと言われてます。
もしあなたの家の隣が長年空き家状態であり、今にも倒壊しそうなほど傷んでいたらどう思いますか?台風や地震で倒壊するのでないか?我が家にも被害が及ぶのではないか?と心配になりますよね。このように空き家を放置するということは、その家の持ち主だけでなく隣近所に住む人の生活にも影響を与える可能性があります。
景観を損ねる
誰も手入れをしないまま放置されると家屋は急激に老朽化します。もちろん庭木なども放置されたままなので雑草は生い茂り、野良猫などの住み家になってしまう恐れもあります。
実はわたしく編集長の家の隣も5年以上空き家のまま放置されています。築50年は軽く超えているような木造平屋です。やはり野良猫が住みつき、年に何度も子猫を生んでは鳴き声がうるさく夜も寝れない日々が続きます。
廻りの家はほとんど築15年ほどの振興住宅街ですので、隣の家だけがこのような状態です。庭木が生い茂り、今にも倒壊しそうなのがわかりますよね。こうなると倒壊だけの問題ではなく、景観、悪臭、野良猫、虫の発生源など、隣近所にも多大な迷惑をかけることになります。
犯罪の温床となる
そしてもう1つ問題があります。それが犯罪を誘発する温床となることです。これも我が家の例を例えると、実は昨年空き巣に入られました。我が家の防犯が甘かったこともありますが、このような誰が見ても空き家とわかるような家が隣にあった場合、泥棒には格好の隠れ蓑となるのです。つまりこの空き家がある側の窓であれば、ひと目に触れることなく窓を割り侵入しやすくなるということです。
それと放火などの標的にもされやすいそうなので、空き家が隣近所にある場合は注意が必要です。
空き家を所有している家主にもリスクはある
ここまで紹介したのは、空き家がある地域の問題でした。しかし当然今回施行された「空き家対策特別措置法」では、空き家を所有する家主にも大きなリスクとなりうる部分があります。それが今回一番の注目ポイントでもある「税金の増額」です。
これまで空き家であっても建物があることで、税の優遇が受けられていました。一般的に言うところの「固定資産税の優遇処置」というやつです。この優遇制度により固定資産税の額は本来の6分の1に減税されていたのですが、今回の法改正によりこの優遇制度を受けられなくなる可能性が出てきました。
空き家全てに対して税の優遇制度が撤廃されるということではありませんが、倒壊などの恐れがあり、管理が行き届いてない空き家に対して各自治体が所有者に対して改善命令を出せるようになったのです。そしてこの改善命令に従わない家主に対して「固定資産税の優遇を撤廃する」ことが出来るようになりました。
これまで相続した実家などを所有しており毎年10万円の固定資産税を払っていた場合、優遇制度が撤廃されることで最大60万円程度の固定資産税を毎年収めなければならなくなります。
今後の空き家対策を考える
このように思い出が詰まっている実家だから売却したくない、賃貸として貸したくない!という考えは通用しない時代になってしまいました。どうしても売却したり、賃貸として貸し出すのが嫌だというのであれば、毎週自分が空き家まで出向き手入れをして管理することで対処することは可能だと思います。
実際に編集長の家の近所にも毎週末に県外から来て空き家となった実家の手入れや管理をされている家があります。しかしこのように毎週通って管理をするというのは並大抵の労力ではありませんし、車で通える距離じゃないという人も多いでしょう。
そういう場合は空き家の近所にある便利屋さんに依頼したり、地域のシルバー人材センターに手入れを依頼することも可能だと思いますが、費用的な問題が出てきてしまいます。ちなみに便利屋さんに庭木の手入れや建物の補修を依頼した場合、おおよその目安金額では1回1万円〜1万5千円程度掛かるようです。シルバー人材センターでも1回5,000円程度掛かります。これを毎月1回お願いするだけでも年間の支出は6万円です。
もちろん草むしりに限ったことなので、別の依頼をすれば当然別途費用が発生します。これほど費用が発生してしまうのであれば、売却や賃貸ということも視野に今後の対策を考えていく必要がありますよね。
空き家の選択肢は4つ
それでは具体的に空き家の対策を考えていきたいと思います。まず大前提となる空き家の対策ですが、考えられる選択肢としては以下の4つだと思います。
- 空き家のまま所有する(自分で管理するor業者に管理を依頼する)
- 自分たちor親族が居住する
- 賃貸物件として人に貸す
- 売却してしまう
空き家のまま所有する
これまで通り空き家として所有を続けるという選択肢です。この選択肢を選ぶのであれば、税金対策としてしっかり管理とメンテナンスをしてあげることが必要です。上記でも書いているように近所であれば自分で通い管理することも可能ですが、遠方であれば業者にお願いして管理をしていくという方法もあります。
固定資産税や管理費のことを考えれば、よほどの理由がない限りあまりお薦めできる選択肢ではありません。
自分たちor親族が居住する
可能であれば一番現実的だし手っ取り早い解決策だと思います。もし近距離に住んでいるのであれば選択肢の一つとして是非検討してみる価値はあると思います。当然人が居住するということであれば、これまで通りに税の優遇を受けることが出来ます。
賃貸物件として人に貸す
どうしても売りたくない!というのであれば、これが一番現実的な選択肢かもしれません。ただし思い出が強い家なので売りたくない!という考えだけでこの選択肢を選ぶのは間違いだと思います。編集長も長年不動産業界に携わってきましたが、人に貸してしまえばまるっきり別の家のようになってしまいます。悲しい話ですが、良い思い出として残しておくのは難しいということです。
また古くなった家をすぐに借りてくれる人がいるとも限りませんし、仮に借りてくれる人がみつかっても今度は修繕費やメンテナンス費などにお金が掛かることも覚悟しておかなければなりません。
売却してしまう
やはり一番無難な方法としては売却してしまうことでしょう。賃貸と同じように古くなった家を買ってくれる人がいるのか?という問題も出てきますが、それなら尚のこと早い段階で売却しなければどんどん買い手がつかなくなるだけです。
売却しよう!という意思があるのでしたら、リフォームなどで多少費用が掛かっても今のうちに売却してしまうというのが得策だと思います。この後も空き家はどんどん増えていくのは確実です。そうなるとさらに買い手は見つかり辛く、価格面でも値下がり傾向が強くなります。
また売却して現金化することで、相続時などは一番分配しやすい方法であるのも確かです。
賃貸についてさらに詳しく解説
賃貸として貸し出すという選択肢は現実的だと思います。とくに遠方に住んでて自分たちではどうにも管理できないという物件でも不動産会社が管理してくれますので安心ですし、なにより誰かに住んでもらうことで「空き家」ではなくなります。
家というものは不思議なもので、誰も住んでないとアッというまに老朽化して各所に傷みが出始めますが、だれかが住んでると老朽化するスピードも遅くなります。ですので、賃貸であろうと誰かに住んでもらうということは、建物のためには非常に良いことです。
それに今は賃貸といっても色々な活用法がありますので、自分たちが予想している以上に収益を稼ぎ出してくれる可能性も秘めているのです。
賃貸の利用用途
古い一軒家でも今は「古民家」や「DIY」ブームのように追い風にあると言えます。また個人への賃貸だけでなく、古民家カフェや小規模型グループホームなどの利用用途もありますので、敷地が広い!建物が大きい!古風な作り!など色々な需要があります。
これまた編集長の実体験になるのですが、空き家がある逆方向の家は実は今小規模グループホームが賃貸として借りています。築50年くらいの古い家なのですが、敷地が200坪以上あり、建物も60坪くらいあるでしょうか。それに外周を高い塀で覆われているため老人介護のグループホームには最適な条件だったのでしょう。
しばらくは売りに出されてましたが土地が広いため高額となり、ずっと買い手がつきませんでした。それなのにグループホームに貸すことで通常の賃貸以上の家賃収入を得ることが出来ているようです。当然グループホームとして利用するためには、内装などを多少リフォームする必要はあったと思いますが、それらの費用を考えてもメリットは十分にあると思います。
そしてももう1つお薦めしたい賃貸方法が今なにかと話題になっている「民泊」です。テレビのニュースや情報番組などでも何かと取りあげられ目にする機会も増えていると思いますが、この民泊専用の施設として貸し出すという選択肢もあります。
ただし民泊として利用する場合、お客さんが出て行かれたあとの清掃問題などが絡んできます。近くだったら自分たちで清掃すればいいだけなのですが、遠方だと専門の業者に依頼しなければならずコスト的な問題が出てきますし、田舎であればそういう専門の業者がないので便利屋などに依頼しなければならず、そうなると出費の方がさらに多くなるという本末転倒な結果になる恐れがあります。
売却についてさらに詳しく解説
築年数が経過しているような古い家でもこのように再利用できる可能性は多々あります。しかしやはり最初の投資(リフォーム費用など)はそれなりに必要なので、いまさらお金を掛けてまで人に貸すこともないだろう。というのであれば、やはり売却という選択肢になると思います。
そうなるとやはり問題となるのが、古い家を買ってくれる人が実際にいるのか?という問題です。タダ同然でもいいから売却したい!というのであれば、よほどの立地や物件でない限り買い手は見つかると思います。しかし、編集長が最近読んだネットニュースの中にこのような記事がありました。
同じように相続した実家の処分に困っている方のブログです。その方も今回の空き家対策特別措置法を知り、慌てて自分が相続して空き家となっている実家を処分することを決めたそうで、最寄の不動産会社に売却の相談をしたそうです。
しかし、まったく買いたいという人が現れず、やっと買ってくれそうな人が見つかったと不動産会社から連絡があったと思ったら、なんとわずか「8万円」でしか売れないと言われてしまったそうです。しかも買ってもらうには、今ある建物を撤去し更地にしてくれることが条件だそうです。更地にするだけでも撤去費用で150万円ほどかかります。
150万の費用をかけて8万円で売るなんてバカバカしいと思いますよね?でも、そのまま空き家にしておくと、固定資産税が6倍になってしまいます。迷った末に150万円の解体費用を出してタダ同然で売却することを決めたそうです。
このブログを読んでバカだな!と思う人も大勢いるかもしれませんが、編集長としてはこれは良い決断だったと思います。今後ますます空き家が増えることで8万円でさえ買ってくれる人がいなくなることが明白だからです。毎年多額な固定資産税を収めるくらいなら、ここで思い切って売却することを決断したのは英断だったと思います。
ただ突き詰めれば、その不動産会社だけに頼るのではなく、インターネットなどで調べて売却査定を依頼したり、他の業者の意見を取り入れなかったことがマイナスだと感じました。
きっと8万円という値段から想像すると田舎だったことは容易に想像できます。近くに不動産会社もそう多くはないのでしょう。しかし今の時代、インターネットを利用すればいくらでも選択肢は増やすことができます。ヤフーのオークションなどが良い例です。近くにリサイクルショップがなければオークションで物を売ろうと思えば日本全国の人へ情報を発信することができますし、高い確率でその商品を欲しいと思ってくれる人と繋がることができます。
これは不動産も同じです。あなたの実家を欲しい!買いたい!と思っているのは、その地域に住んでる人だけではありません。これから田舎暮らしをしようと考えている人、またはグループホームや古民家カフェをオープンしようと考えている人、静かな地域に別荘を欲しいと思っている人など、色んな人があなたの家を気に入ってくれる可能性があることを忘れないでください。
インターネットの売却査定を利用すれば、何処に住んでいてもネット1つで査定依頼をすることができますし、色んな業者の話を聞けたり、アドバイスを受けることも可能です。
一括査定に関してはこちらのページで詳しく解説していますので参照頂ければと思います。