家やマンションを買う側としては、ぜひしてもらいたいけれど、売る側としては、できればしたくないものは何でしょう?そう、「値引き」です。不動産は、店頭で販売しているような一般的な商品と違って「定価」というものが決められていないので、どうしても売買の際に「値引き」をする、しないが発生してきます。
できれば少しでも高く売りたい!と考えている売る側としては、値引きはやっぱりしたくないもの…と思われているのではないでしょうか?でも、意外かもしれませんが、買う側にとってだけでなく、売る側にとっても「値引き」は使い方次第でとても役に立つことがあるのです。
そこで、ここではそんな売る側にとっての「値引き」について、基本的なことからまとめてみました。家やマンションを上手に売りたいと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
値引きは必要?
そもそも家や不動産の売る際に、値引きは絶対に必要なものなのでしょうか?値引きをした場合と値引きをしなかった場合では、何が変わってくるのでしょうか?では、まず値引きのメリットとデメリットについてみていきましょう。
値引きのメリット
値引きが最も役に立つとき、それは、あなたが売りに出している家やマンションを購入しようかどうか迷っている買い手との交渉をしているときです。
家やマンションの購入は、一般的には、人生でそう何度も遭遇することがない、とても高額な買い物です。ですから、たとえ自分が希望していたものに近い物件に出会い、「買おうかな」と思ったとしても、「もっと良い物件があるかも」などという考えが浮かんでしまい、購入決心がなかなかつかないことがあります。
そのような購入しようかどうか迷っている状況の中で、売り手の「値引きします!」という一言が後押しとなって、家やマンションの購入を決心したという人は少なくありません。購入を迷っている買い手に、「この物件を買おう!」という決心をさせるきっかけとして、値引きはとても有効な手段であるといえるでしょう。
値引きのデメリット
値引きのデメリットは、ズバリあなたが売りに出している家やマンションの価格が下がってしまうということです。値引きをすると、あなたが受け取ることができる金額が減ってしまうことは、どうしても避けられません。
また、一度値引きをしてしまうと、そこから再び値段を上げることが難しくなってしまいます。購入希望者が現れなかったので値引きをしたけれど、やはり売れずにまた値引きをする…ということを何度もくりかえすと、結果として売りに出している家やマンションの値段がどんどん下がっていまい、思っていた販売価格とほど遠くなってしまう、という結果になってしまうこともあり得ます。
また、購入希望者に安易に値引きを提示してしまうと、「よほど早く売りたいんだな」と足元を見られてしまい、さらに値引きを要求されてしまう、という場合もあります。売買の交渉をしている時に値引きは効果的ですが、値引きをするタイミングが大切であることは言うまでもありません。
値引きには応じた方がいいの?
不動産仲介業者が提案してきた値引きや、購入希望者から申し出られた値引きに応じた方がいいかどうか、売る側としては迷うところですよね。結論から述べると、値引きに応じた方がよいかどうかは、その時の状況次第、ということになります。
不動産仲介業者の中には、早く売ってしまいたいがために、「今、値引きしないと売れませんよ」などと早々に値引きを提案してくる場合があります。担当者にそのように言われると、値引きをしなければいけないのかと思ってしまいがちですよね。
でも、もしあなたが売りに出している家やマンションに、多くの内見希望者が来ているのならば、しばらく様子を見た方がよいでしょう。内覧希望者が多いということは、反響がよいということ。ですから、急いで値引きをしなくても、あなたが出している価格で購入してくれる買い手が現れる可能性があります。
また、購入希望者からの値引きについては、売買の交渉時に出たものであれば、できるだけ応じた方がよいでしょう。ただし、その際の値引きの駆け引きに関しては、相手の様子をよく見極める必要があります。どのタイミングで値引きをするのか、いくら値引きをするのかをよく考えてから、値引きを提示するようにしましょう。
値引きのテクニック
使い方によっては、家やマンションを売る時にとても役に立つ値引き。では、どのように値引きをすればよいのか、どんなことに気をつければよいのかを見ていきましょう。
値引きを含んだ売り出し価格の設定
売り出し価格を設定する時が、値引きを意識する最初のポイントです。不動産の売買において、値引き交渉はかなりの確率で来るので、最初から値引き交渉はあるものと考えて売り出し価格を設定するようにしましょう。
まず、「どうしてもこの値段で売りたい!これ以上は下げられない!」という価格を設定します。そこに、値引き分の金額を足したものを売り出し価格にします。あまりにも高くしすぎると、物件そのものに興味を持ってくれる人が現れなくなるので注意しましょう。
価格を設定する際に、実際に売りたい価格と値引き分を足した価格との桁の数字を下げられるようにすると、より値引きの効果が増します。例えば、2,200万円の物件を200万円下げて2,000万円にするよりも、2,100万円から200万円下げて1,900万円にした方が、値引きによるお得感がありますよね。売り出し価格を設定する時に、ぜひ意識してみてください。
値引きをする時は思い切って
最初に述べたように、売る側にとって、できれば値引きはあまりしたくないものです。でも、だからと言って少しずつジリジリと値引きをするのは、かえって値引きが逆効果になる場合があるので注意が必要です。
例えば、売却する物件の広告を3,300万円で出したとします。その価格で反響がなかったので、しぶしぶ値引きをすることになり、3,200万円、3,100万円、3,000万円…とジリジリと価格を下げていった場合、その広告に注目している人は、少しずつ下がっているから、もう少し待てばもっと下がるかもしれない、と思うかもしれません。また、少しずつ下げているということは、購入希望者がいないんだな、と足元をみてくる可能性もあるでしょう。
反対に、3,300万円から一気に3,000万円や2,980万円と値引きをした場合、広告に注目していた人は、一気に安くなったことでその物件により目を向けることになります。さらに、こんなに安くなったのなら、早く申し込みをしないと他の人に買われてしまうかも、と焦るかもしれません。
このような効果は、購入希望者に向けて値引きをする場合も同じです。状況にもよりますが、同じ金額を値引きするなら、思い切って下げた方が、より値引きの効果を期待することができるでしょう。
まとめ
定価が決まっていない不動産の売買において、値引きは、ある程度避けられないことが多いようです。なので、実際に売れる価格は、どうしても売り出し価格よりも安くなってしまうことは最初から覚悟しておいた方がよいでしょう。
でも、仕方がないからといって何も考えずに値引きをしていくと、思わぬ損をしてしまいます。値引きを一つの戦略として活用し、上手に家やマンションの売却をすすめていきましょう。
また、あえて値引きをしない、という方法もあります。「この物件の価値は、この価格以下にはなりません」とはっきりと言い切ることで、購入希望者の物件への信頼を得るという方法です。しかし、そのように言い切るためにはしっかりとした根拠が必要です。売却を急いでいない、どうしても売り出し価格で売る必要がある、という場合、このような方法も視野に入れてみてください。
いずれにしても、値引きの効果を最大限に活用するためには、値引きのタイミングと値引き価格を慎重に見極める必要があり、それには仲介業者との連携が必要になってくることは言うまでもありません。やたらと値引きをすすめてくるような仲介業者ではなく、値引きについて一緒にしっかりと考えて助言してくれる仲介業者に、売却を依頼するようにしましょう。