住宅ローンが支払えないために家やマンションを売る場合の注意点

さまざまな事情でローンの支払いが難しくなり、やむを得ず家やマンションを売却する、という人も少なくありません。ローンが支払えなくなりそうな場合、家やマンションを売却すればそれですべてが終わる、というわけにはいきません。ローンが残っている場合は、マンションを売却した金額でローンを完済しなければなりません。つまり、マンションを売却しても、ローンが完済できなければ、支払いはずっと残ることになります。

ローンが支払えない状態のまま放置していると、通常の仲介で売却することもできなくなり、任意売却や競売ということになってしまいます。ローンが支払えなくなりそうな場合、または支払えなくなった場合、どのようにすればよいのでしょうか?シチュエーション別に順を追って見ていきましょう。

売却した金額でローン残額が支払えそうな場合

ローンの支払いが難しい状況になってしまったけれども、ローンの残額が少なかったり、マンションが値上がりしていたりして、家やマンションを売却した金額でローンが完済できそうな場合、どのようにすれば良いかというポイントをまとめました。

できるだけ早く売り始める

マンションを売却した金額でローンが完済できそうな場合は、まず、できるだけ早く仲介業者に査定をしてもらい、売却活動を始めることをおすすめします。なぜなら、ローンの支払いが滞ってから売却活動を始めると、売却期間に余裕を持たせることができなくなってしまうため、希望に近い価格で買ってくれる買い手が現れるまでじっくりと売ることが難しくなるからです。

また、売却に何ヵ月もかかってしまうと、当然、ローンが支払えない状況に陥ってしまう可能性が高くなります。ローン滞納になると、通常の仲介で売ることが難しくなり、その結果、大幅に損をしてしまう危険性が高くなります。さらに、当然ですが売却活動中の管理費なども支払わなければなりませんので、転居先の準備や引っ越し費用などの捻出が難しくなる恐れも出てきます。

ローンの支払いが滞りそうな時は、まず、インターネットの不動産一括査定サイトなどを利用して、複数の業者に査定をしてもらい、できるだけ高い値段で素早く売ってくれるような仲介業者に相談されることをおすすめします。

少しでも高く売るために

ローンの支払いが難しくなって売却するのならば、言うまでもありませんが、少しでも高く売る必要があります。ては、少しでも高く売るためには、売却期間に余裕を持たせて早く売りに出す以外に、どのような工夫をすればよいのでしょうか?

すぐに引き渡しできるようにする

引っ越し先の確保や準備ができるかどうかにもよりますが、早く少しでも高く売るためには、売る側の都合で引き渡しの期限を決めるのではなく、買い手の都合に合わせて、いつでも引き渡せる状態で売却することをおすすめします。

転居先を急いで探している人は、とにかくすぐに入居できる物件を探しています。当然、そのような人は、じっくりと探している人よりも値引きなどの交渉に時間を割くことができないので、値下げの要求が少なくなる傾向があります。そのような「急いで入居したい」買い手を見つけるためには、できるだけ買い手の都合に合わせて、いつでも引き渡せる状態にしておく方がよいでしょう。

空き家にする必要はない

すぐに引き渡しできる状態が良いのなら、完全に空き家にした方が早く売れると思われるかもしれませんが、決してそうではありません。場合によっては、空き家の方が売れにくくなる場合があるのです。

空き家にしてから売却すると、売却を急いでいることを見透かされて、足元を見られる場合があります。また、壁や床などに、家具を運び出した後の「汚れ」が目立ってしまい、部屋全体が汚れている印象を持たれてしまうことがあります。

新築のモデルルームに、家具などが配置されていることからもわかるように、買う人が「新しい生活」をイメージしやすい雰囲気を作り出すことが大切です。室内が散らかりすぎていて、きれいに掃除することが不可能な状態であれば、思い切って空き家にするのも一つの手ですが、そうでない場合は、掃除を入念にして、買い手が憧れるような生活を演出することが、売りやすくするための有効な手段の一つになるでしょう。

売却した金額でローンの残額が支払えない場合

ローンが支払えなくなり、マンションを売却しようとしても、マンションの値段が下がったり、ローンの残額が多すぎたりして、マンションを売却した金額ではローンを完済できそうにない…。そのような場合、どうしようもないからと放置したままにしていると、マンションを競売にかけられてしまうという最悪の状況になります。マンションを売却した金額ではローンを完済できそうにないけれども、すでにローンの支払いを滞納していて、どうしたらよいかわからない、という場合は、そのまま放置せずに任意売却ができるかどうかの確認をしてみてください。

任意売却とは?

マンションをローンで購入する、ということは、銀行などから借りたお金でマンションを購入し、分割してそのお金を銀行に返済していく、ということです。その際、お金を貸した人(銀行)は、お金を借りた人(あなた)がローンを支払えなくなった場合に備えて、購入したマンションを担保(借金のカタ)に設定します。そして、あなたがローンを支払えない状況になった場合、お金を貸した人(銀行)が担保のマンションを売却し、貸したお金の返済に充てる、これが「任意売却」の大まかな流れです。

任意売却をするための注意点

任意売却の最大のポイントは、債権者(お金を貸している人、ここでは銀行)の承諾が必要である、ということです。いくら任意売却を希望しても、債権者である銀行が承諾しないと行うことができません。

ですから、ローンの支払いが滞りそうだったり、すでに滞納したりしている場合は、仕方がないからと開き直ったり放置したりせず、銀行にそのことをきちんと説明して、しかるべき対応をしてもらえるよう、真摯な態度を崩さないことが大切です。

また、言うまでもありませんが、任意売却をしたからといって、債務(借りているお金)がゼロになるわけではありません。任意売却でマンションを売った金額で、ローンの残額(借りているお金)をすべて支払いきることができなかった場合は、残りを少しずつ返済していかなければなりません。これは競売で売却した場合でも同じです。この返済もできない、という状態であれば「自己破産」をすることになります。

任意売却と競売との違い(任意売却のメリット)

「どうせマンションを手放すことになるなら、任意売却にしなくても競売になるまで放っておこう」と考える人もいるかもしれません。でも、ちょっと待ってください。確かに、差押えになって自動的に売られてしまう競売と違って、任意売却をするためには、いろいろな手続きや手順があって大変ですが、それをするだけのメリットがあるのです。

任意売却の方が高く売れる

競売になった場合、一般の人が買い手になることは少なく、競売専門の業者が買う場合が多くなります。また、通常の仲介による売却と違って、競売では内覧などをすることができなくなるため、特にマンションは市場の価格よりもかなり安い値段でしか売れないことが多く、一般的には市場価格の5〜6割ぐらいだと言われています。これに対して、任意売却だと、通常の仲介で売却した場合とほぼ同じぐらいの価格で売ることが可能になります。

単純に言うと、任意売却の方が競売よりも高く売ることができるため、後々の債務(借りているお金)が少なくなるということです。少しでもお金が必要な状況において、これは見逃せないポイントですよね。

必要な経費を残すことができる

競売にかけられた場合、売却金額はすべて債務(借りているお金)の支払いに充てられますが、任意売却の場合は、売却金額の中から、新しい住居の準備費用や引っ越し代金などを取り分けることができる場合があります。もちろん債権者(お金を貸している側)である銀行の承諾が必要になりますが、引っ越しのための費用の捻出先を探さなくても済むのは、とても助かるポイントだといえます。

引き渡し時期を調整できる

競売の場合は、差押えが決定すると、引き渡さなければならない日が強制的に決められるので、引っ越し時期などを調整することができません。でも、任意売却だと、場合によっては、引き渡し時期を調整してもらうことができます。もちろん、債権者(お金を貸している側)である銀行の承諾が必要になりますので、心象を悪くしないようにした方が良いのは言うまでもありません。

近所に知られにくい

任意売却の場合は、売却を仲介する業者にあらかじめお願いしておくことで、近所に知られないように売却することができますが、競売の場合は、競売物件として公示やインターネットでも公表されますので、近所の人に知られる可能性があります。できるだけ知られずに済ませたいのなら、競売はできるだけ避ける方がよいでしょう。

まとめ

ローンが支払えない状況に陥ると、経済的ダメージだけではなく心理的ダメージを受けるため、何もする気が起こらずにそのまま放置してしまう、という人が少なくありません。しかし、そこで何もせずに放置してしまうと、ローンを滞納して1〜2ヵ月後に督促状が届き、早い場合だと3〜6か月でマンションを差し押さえられてしまいます。そうなると、経済的な負担や心理的な負担が、これまでよりもさらに大きくなることは言うまでもありません。もちろん、家族への影響も大きくなります。

そのような事態にならないためにも、ローンの支払いが難しくなってきた時点で早めの決断をし、少しでもあなたや家族への負担が少なくなるような方法を考えましょう。通常の仲介で売却する場合や、任意売却をする場合は、とにかくいろいろな業者に査定をしてもらって、適切な売却活動とアドバイスをしてくれる担当を探すことが何よりも大切です。インターネットの不動産査定一括サイトなどを上手に利用して時間を節約し、少しでも早く今の状況から脱することができるよう、がんばってくださいね。

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