仲介業者の違法な両手仲介(囲い込み)で損をしないために

家やマンションを売却する時、少しでも「早く」「高く」売れることを望む人がほとんどでしょう。でも、売却を依頼した不動産仲介業者が自分達の利益を重視し、「両手仲介(囲い込み)」をしたために、あなたの不動産が「早く」「高く」売れない…という事態に陥ることがあるのをご存じですか?

「『両手仲介』とか『囲い込み』って何?」「どうすればそれを避けられるの?」という人のために、ここでは「両手仲介(囲い込み)」の仕組みと、それを回避するポイントについて詳しくみていきましょう。

「両手仲介(囲い込み)」とは

不動産仲介業者が、自分達の利益を増やすために行う「両手仲介(囲い込み)」とは、どのようなものなのでしょうか?その説明に入る前に、そもそも仲介業者がどのようにして不動産売買によって利益を得ているのかをみていきましょう。

不動産仲介業者の利益「仲介手数料」

不動産仲介業者の利益のほとんどは、ずばり「仲介手数料」から成り立っています。仲介手数料とは、不動産仲介業者を通して家やマンションを売ったり買ったりした場合に、売り手や買い手が売買を依頼した仲介業者に成功報酬として支払うお金のことです。成功報酬ですので、もし契約が成立しなければ、仲介業者は仲介手数料を得ることができません。

仲介手数料は、売り手と買い手、それぞれが仲介を依頼した業者に支払うことになっており、その額の上限はきちんと法律で計算式が定められています。例えば、5,000万円の物件の売却が成立した場合の計算式は、(5,000万円 × 3%) + 6万円 +消費税(8%) = 168万4,800円となり、売り手は仲介業者に仲介手数料として上限168万4,800円を支払うことになります。

では、買い手の方はどうでしょうか?売買が成立しているのですから、当然買い手がいますよね。先ほどの5,000万円の物件を購入した人は、購入を仲介してくれた業者に仲介手数料168万4,800円を上限として支払うことになります。売買が成立した場合、売り手と買い手、それぞれが仲介業者に仲介手数料を支払う、ということがおわかりいただけたかと思います。

売り手と買い手、両方から仲介手数料を得るには?「両手仲介」

上述のように、仲介業者は売却を仲介すれば売り手から、購入を仲介すれば買い手から、それぞれ仲介手数料がもらえるわけです。では、売り手と買い手、両方の仲介をすればどうなるのでしょうか?そうです、両方から仲介手数料がもらえることになります。先ほどの5,000万円の物件を売買した場合だと、168万4,800円×2=336万9600円の仲介手数料が、一度に手に入ることになります。

このように売買両方を仲介することによって、仲介業者が両方の仲介手数料を手に入れることを「両手仲介」といいます。不動産仲介業者にとって、一つの契約成立で仲介手数料が二倍になる「両手仲介」が、とてもオイシイ仲介であることは言うまでもないですね。

意図的に「両手仲介」を作り出す?「囲い込み」

通常、家やマンションの売却を依頼された仲介業者は、自社の顧客から買い手を探すだけでなく、レインズ(不動産流通標準情報システム)に登録するなどして、他の不動産仲介業者からも買い手を探します。

家やマンションの売却を依頼された仲介業者が、他の業者からではなく、たまたま自らそのような物件の購入を希望している買い手を見つけることができた場合、その「両手仲介」は偶然の産物で、単にラッキーな取引ができただけ、と言えます。

しかし、仲介手数料が二倍になる「両手仲介」をわざと狙うために、自社で買い手が見つかるまで、他の仲介業者から購入希望者を紹介されても「すでに先約がある」等のウソをついて断るなどというケースがあります。このように、意図的に「両手仲介」を作り出すことを「囲い込み」と言い、法律で禁止されている違法行為となります。

「囲い込み」の現状

家やマンションを、少しでも「早く」「高く」売りたい売り手にとっては、迷惑この上ない仲介業者の「囲い込み」行為ですが、実際にはどの程度行われているのでしょうか?偶然「両手仲介」になった、という場合もありますので、正確に「囲い込み」の事例数を挙げることは難しいようですが、一説によると100件の取引中9〜12件程度の割合で囲い込みが行われていると言われています。

アメリカなどでは、「囲い込み」を生み出すもとになる「両手仲介(同じ仲介業者で売買を仲介して取引を成立させること)」は、法律で禁止されています。しかし、日本では「囲い込み」は法律で禁止されていますが、「両手仲介」は禁止されていませんので、悪質な仲介業者の「囲い込み」を防ぎきれない、というのが現状のようです。

「囲い込み」の問題点

「囲い込み」をすることはもちろん違法行為なのですが、囲い込みをした仲介業者が、最終的に売り出し期間内に買い手を探し出してきて、売り手が希望していた価格での売買が成立するならば、売り手にとって、まだ許容範囲内であると言えるかもしれません。

しかし、中には悪質な仲介業者が偽の買い手希望者を用意して「囲い込み」状態を作り出し、買い替え契約を結ばせた上で契約を解除できないようにし、買い替え先の支払いがあるために売り手が仕方なく家やマンションを安く売却することになってしまう…というような悪質なケースもあるようです。

いずれにしても、「囲い込み」は家やマンションの売買における不動産仲介業者の悪しき慣習であるということは、言うまでもありません。

「囲い込み」に合わないためには?

悪質な仲介業者に「囲い込み」行為をされると、売る側にとって、家やマンションがなかなか売れない…という状況になるだけでなく、買う側にとっても、希望の物件が購入できない…ということになりかねます。では、「囲い込み」に合わないためには、また未然に防ぐためには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか?

買い替え契約に注意

悪質な仲介業者の中には、「囲い込み」をした状態で、売却の仮契約が成立したというウソをつく場合があります。そのウソを信じて、買い替えのための購入契約を先に結んでしまうと、どたん場で売却が不成立になったと告げられ、購入契約の支払いのために売却を急がざるを得ない状態になり、結局安く買いたたかれてしまう…という事態に陥ることもあるようです。

買い替えのために売却と購入を一つの不動産仲介業者に依頼する場合、契約をやたらと急いでくるような仲介業者には注意が必要です。売却契約がきちんと成立してから契約を結ぶ方がよいでしょう。

売却活動報告をこまめにチェックする

専属専任媒介契約や専任媒介契約の場合、不動産仲介業者は、売却依頼を受けてからどのような売却活動をしているかを売り手に定期的に報告する義務があります。もちろん、レインズ(不動産流通標準情報システム)に売却依頼を受けた物件の登録もしなければなりません。

しかし、他の不動産仲介業者に情報を流さないようにして「囲い込み」をするために、レインズに登録した物件の情報をすぐに削除する悪質な仲介業者もいます。そのような仲介業者は、得てして売却活動報告があいまいになる傾向にあるようです。

売却を依頼したらあとは仲介業者に全部お任せ、ではなく、どのような売却活動をしているのかをきちんとチェックし、少しでも怪しい点や不明点があれば、そのままにしないようにすることが大切です。あまりにも売却活動報告がいいかげんな場合は、仲介業者を変更することも視野に入れた方がよいでしょう。

「囲い込み」調査をする

売却を依頼した不動産仲介業者が「囲い込み」をしているかどうか、調査してくれる第三機関や調査会社もあります。「囲い込み」をされているのでは、という心配がある場合には、そのようなものを利用するのも一つの手です。

また、自分自身や知人に協力してもらって「囲い込み」されているかどうかを調べることもできます。不動産仲介業者を装って該当物件について問い合わせた場合と、購入希望者を装って問い合わせた場合との返答を比較して、違っていれば(不動産業者には「すでに契約予定」と返答し、購入希望者には「案内可能」と返答するような場合)囲い込みをしている可能性があります。

売却専門の仲介業者に依頼する

数は少ないですが、不動産仲介業者の中には売却を専門としている業者があります。売却専門ですので「両手仲介」が行われる心配は、とりあえずないと言えるでしょう。どうしても「囲い込み」について不安がある場合は、そのような業者に売却依頼をするのもよいかもしれません。

しかし、売却専門の仲介業者が必ずしも信頼できる業者であるとは言い切れません。どのような仲介業者であっても、信頼できる業者や担当者かどうかをしっかりと見定める必要があることは、言うまでもありません。

まとめ

不動産仲介業者における「両手仲介」や「囲い込み」は、以前から問題視されており、法律の改定を求める声も多く上がっています。しかし、今の時点では、まだそこまでは至っていないようです。

また、大手の仲介業者ならば安心だと思っている人も多いようですが、大手であっても「囲い込み」をしている場合もあります。大手の仲介業者だから「囲い込み」はしない、地元の小さな不動産屋だから大丈夫、ということは一概には言えないのが現状です。

ですから、いかに信頼できる不動産仲介業者を選ぶか、ということが家やマンションを売却する際には何よりも大切なポイントになります。インターネットの不動産一括査定サイトなどを活用し、複数の業者を比較した上で、納得のいく仲介業者を選ぶようにしましょう。

また、売却を依頼している最中であっても「おかしい」と感じたら自分できちんと確認する必要があります。それでも不信感がぬぐえないような対応をされるようでしたら、思い切って仲介業者を変えることをおすすめします。

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