敷金の返還額に納得ができなくて、不動産会社や管理会社と揉めているケースをよく目にしますが、これは大きな間違いです。敷金返還の交渉相手は不動産会社や管理会社ではありません。
これら不動産会社や管理会社はあくまでも、入居者と家主をつなぐ窓口に過ぎないのです。なんの決定権もない不動産会社や管理会社といくら話し合いを行っても平行線の状態が続くだけです。
不動産会社や管理会社は家主からの信用が第一なので、敷金トラブルなど面倒な事は家主に報告もせずに解決しようと、いろいろな手段を使ってきます。つまり、不動産会社や管理会社というのは敷金トラブルのプロであり、入居者を上手く丸めこむのは大得意なのです。
不動産会社や管理会社が家主に相談するのは、本当に内容証明や裁判所からの訴状が届いてからというのも珍しくありません。なんの決定権も持っていない不動産会社や管理会社といつまでも交渉するよりも、家主と直接交渉する方が圧倒的に早期解決に至るということを覚えておいてください。
内容証明を送付する
敷金精算に納得がいかない場合は、すぐに不動産会社や家主に連絡を入れて、あなたの言い分をしっかり主張することが大事です。不動産会社は敷金返還のガイドラインなどの知識は少なからず持っていますので、ある程度、あなたの言い分に耳を貸してくれるはずです。
しかし、家主は高齢の方も多く、そのような人に「国土交通省のガイドラインでは・・・」などと難しい話をしても理解してくれないでしょう。そのような家主には、あなたが何を言っても効果がありませんので、仲介してくれた不動産業者に間に入ってもらうのが良いでしょう。
不動産会社も家主も、あなたの主張に耳を貸してくれない場合には、次の手段に出るしかありません。それが「内容証明」です。
内容証明では、敷金精算の内訳を記載して適正な金額を返還してくれるようにお願いします。その為には、適正な原状回復費用の計算を行う必要がありますので、「敷金鑑定士」などの専門家へ依頼するのが無難です。
「敷金鑑定士」などへ依頼すると内容証明の発送まで代行してくれますので、ちょっと料金は高くなりますが、一緒に依頼しておきましょう。
内容証明は、もし法廷などの闘争へと発展した場合などには、欠かすことができない証拠品となりますので、相手に敷金返還の意思がまったく感じられない場合は、早急に内容証明を送っておきましょう。
実際に裁判となることはほとんど無い
今現在でも、敷金返還を巡るトラブルで法廷闘争している案件は数多くあります。しかし、実際には裁判などの法廷闘争の前に話し合いにより解決することがほとんどです。
実際に私が不動産会社の営業マンをしていた時にも年間で5件〜10件くらいの敷金返還を巡るトラブルはありましたが、1件たりとも裁判など法廷闘争へと発展したケースはありませんでした。
不動産会社などは、「どうぞ、裁判でもなんでも好きにしてください。契約書通りの敷金返還を行っているのですから、こちら側には何の落ち度もありませんから」などのようにきっと強気の姿勢を示してきます。
しかし、いざ内容証明や裁判所からの訴状などが届いた時点で不動産会社や家主の態度が一変するというのが、これまでの私の経験です。
つまり、高齢の家主などは別としても、不動産会社などは裁判となると、まず勝ち目が無いということを十分承知しているのです。勝ち目のない裁判に時間を費やすほど不動産会社も馬鹿ではありません。
さらに、裁判などで期間が長引けば、それだけ利息なども高くなります。敷金というのは預けているお金ですので、返済が遅れるとその分の利息も請求できるのです。
裁判になった場合の費用と期間について
仮に敷金返還トラブルが裁判などの法廷闘争となった場合について説明したいと思います。やはり、気になるのはどれくらいの期間と費用がかかるのかということだと思います。
法廷闘争には
- 民事調停
- 支払い督促
- 少額訴訟
- 民事訴訟
の4種類が考えられますが、敷金トラブルなどでは一般的に「少額訴訟」として争われるケースが多いようです。
できれば、調停委員をいれた民事調停が理想ですが、家主側に話し合いに応じる意思がない場合には、少額訴訟が一番手っ取り早い方法です。ですので、今回は「少額訴訟」を行った場合の、費用と期間を簡単に説明したいと思います。
少額訴訟とは、60万円以下の金銭トラブルに対応しており、簡易裁判所へ申立てを起こします。通常の裁判であれば3ヶ月くらいかかる裁判期間もわずか1日、たった1回の裁判で結審してしまいますので、非常にスムーズです。
敷金トラブル用の申立て訴状用紙は簡易裁判所に用意されていますので、非常に簡単に出来てしまいますし、費用の方も10万円ごとに1000円の収入印紙が必要で30万円の敷金トラブルであればわずか3000円ということになります。
別途切手代金が必要となります
ただし、家主側が通常の裁判を要求してきた場合には、通常の民事裁判へと移行することになります。
過去5年以内なら敷金の返還請求ができる
あくまでも参考程度に書かせていただきますが、敷金返還の請求は5年という時効があります。つまり5年以内敷金返還に関することであれば、すでに敷金が返還されている3年前の事案でも再び正当な敷金返還を請求することができるという訳です。
どうしても過去に納得がいなかった敷金返済などを抱えている人は「敷金鑑定士」などの専門家に1度相談されてみては如何でしょうか。