敷金返還トラブルの最大の原因となっている原状回復に関する基礎的な内容は、別記事の「敷金として請求される金額の主な内訳について」で説明していますので、参考にしてください。
本来原状回復とは、明らかに入居者の過失が原因の傷や損傷個所がある場合に適応されるものであり、畳の表替えや壁紙の劣化などは、入居者ではなく家主が負担すべきだという考えが近年になり急激に浸透してきています。
そこで今回は、「借り主が負うべき原状回復義務」について、どこまでが妥当かを考えてみたいと思います。
原状回復のガイドラインについて
これまでは賃貸物件の退去時には預けておいた敷金から、畳の交換費用やハウスクリーニング代金など様々な費用が差引かれて返還されてきましたが、ほとんどのケースで手元に戻ってくる金額は微々たるものでした。
しかし、平成10年3月に国道交通省によって原状回復のガイドラインが制定され、これにより入居者と家主の原状回復における負担義務や割合が明確になりました。
本来であれば、これで原状回復などのトラブルは減少するはずなのですが、10年以上経った現在でも敷金トラブルは後を絶ちません。
原状回復は入居者と家主どっちが負担するのか
国土交通省が発表した原状回復を巡るガイドラインを参考に話をすると、これまで入居者が負担していた畳の表替えやクロスの張り替えなどは、家主が負担するのが相応であると示されています。
その他にも、ハウスクリーニングや鍵の交換までも家主が負担するのが相応であるとされているのです。
しかし、100%家主側が負担するという訳ではありません。これは、入居年数が大きく関係してくるのです。つまり、畳やクロスなどはどんなに気を使って使用いていても経年劣化により、損耗があるという見解なのです。
ですので、畳やクロス、カーペットなどは入居していた年数によって家主との負担割合で原状回復するのが相応しいとされています。負担割合は対象品によって違いますが、おおむね6年以上の入居期間であれば入居者の負担割合は0〜10%くらいと思ってよいでしょう。
敷金のほとんどは返還されるべきである
家賃の滞納もなく、煙草の焦げ跡や入居者の過失による損傷などが皆無だとすると、国土交通省が発表しているガイドラインに沿って敷金精算をした場合、入居者が原状回復のために、負担する費用は実に少額で済むということが理解頂けると思います。
つまり、賃貸契約時に預けておいた敷金は全額に近い金額が返還されるべきなのです。
なぜ、敷金トラブルは減らないのか
ではなぜ敷金トラブルは一向に減らないのでしょうか?この原因はいくつか考えられますが、その原因のひとつに家主には高齢の方が多いという考えがあります。
高齢の家主の場合、これまで何十年もの間「敷金から原状回復をする」というのが常識だと思って家主業をやってきた人たちばかりです。そんな家主に「国土交通省のガイドライン」や「負担割合」などといっても理解してもらえないのです。
ちょっと悪意のある言い方になってしまうかも知れませんが、高齢の家主に難しい話をしても聞く耳を持ってくれないというのが原因でもあると思います。
実際に私が働いていた不動産会社が管理している物件の家主も、若い年代の家主にはガイドラインの話をすれば理解してくれる人が多かったのですが、やはり年配の家主は話しても理解できないというか聞く耳を持たない家主が多かったというのが実情でした。
敷金精算は法廷闘争となる場合もある
敷金トラブルで敷金の精算に納得ができない場合は、最悪裁判となることもあります。現在でも数多くの敷金トラブルが法廷で争われていますが、基本的にはほとんどのケースで入居者側が勝利しています。
このように敷金精算に納得ができない場合の対処方法は別記事の「敷金の返還で大家側ともめた時の対処法」や「敷金返還で大家側と争う場合の注意点、費用について」で詳しく説明していますので参考にしてください。