敷金は全額返還されて当然のように書いているサイトなどを良くみかけますが、これは間違いです。国土交通省のガイドラインに沿って原状回復をおこなったとしても、預けておいた敷金が全額返ってくることは、まずありません。
原状回復の費用は基本的に負担割合で決まっていますので、居住年数が短ければ、それだけ入居者の負担も大きくなりますし、長期間居住していても少ないですが負担する費用は発生します。
さらに、原状回復作業をおこなう内装業者や設備業者などを手配して見積りなどの作業を行ってくれているのは、不動産会社や管理会社なのです。これは、本来であれば入居者や家主がおこなう作業なのです。
それを不動産会社や管理会社が代わりにしてくれているのですから、それなりの報酬を支払うのは当然です。基本的にこれらの作業は敷金返還の際に事務手数料として差引かれているはずです。
ですので、預けておいた敷金のうち50%〜80%ほどのお金が手元に戻ってくれば、適切な敷金精算が行われたと思ってよいでしょう。
最近の敷金返還事情を知る
上記で説明したように50%〜80%の敷金が戻ってくれば問題ないのですが、多くの場合は預けておいた敷金の30%以内の金額しか戻ってこないケースが多いようです。
これは、不動産会社の巧みな作戦の場合が多いのです。実際に私も不動産会社の営業マンをしていた経験があるので、実体験としていえるのですが、「敷金は5万円〜10万円返しておけばクレームは出ない」という考えがあるのです。
これまで、敷金はほとんど返還されなくて当然という考えが一般的でしたが、最近では携帯やパソコンを使い簡単にインターネットに接続できますので、さまざまな情報を簡単に入手することができます。
とうぜん、敷金の返還で疑問に思うことがあれば、すぐにインターネットで調べるでしょう。そうなると、簡単に国土交通省のガイドラインに沿ったサイトや記事を発見することができます。
こうなると敷金を全額返還してほしいと言ってくる人が増えますので、敷金返還に疑問を感じないような金額を最初から返還するというのが、最近の不動産会社の考えなのです。
契約書の内容は有効なのか?
敷金トラブルが発生した場合に不動産会社や家主が必ず言うのが「ちゃんと契約書にも書いてあることなので、契約書通りに敷金精算をします。国土交通省のガイドラインはあくまでも敷金精算の目安なので法律的にみても契約書が優先されますよ」などのように契約書を盾に強引に敷金精算を進めようとします。
確かに、契約書に書いてあるのであれば仕方ないかと思う人も多いでしょうが、一方的な内容の契約書は無効とされますので、あまりにも理不尽な内容の契約書であれば、いくら契約書に敷金関連の項目が記載されていたとしてもそれは無効だと判断される場合もあります。
同じような例を出して説明すると、数年前から武富士やアコムなどの過払い金返還という問題が有名ですが、これはお金を貸す際に法律で決められている金利よりも高い金利を徴収していたことが問題になっているのです。
このケースも当然、契約書のなかで決められている金利だったのですが、裁判所は契約書の内容は無効であるという判断を下しています。
しかし、本来は賃貸契約を交わす時点で、契約書の内容をよくみておけば、敷金トラブルの多くは避けられるのも事実です。賃貸契約の際には必ず、契約書をしっかりと確認してから契約するようにしましょう。
敷金の返還金額に納得ができない場合
もし、敷金精算の内容に納得ができないと思った場合は、すぐに不動産会社に問い合わせして、敷金精算の詳しい内訳などが記載されている明細書を確認させてもらいましょう。
その明細書に「クロス張り替え代金10万円」とあった場合に、入居負担4万円、家主負担6万円などという計算がされていれば問題ないでしょう。
しかし、クロス張り替え代金10万円がすべて入居者の負担となっている場合には問題がある敷金精算の可能性が高いと言えるでしょう。
入居者と家主の負担割合などは入居年数などによって細かく決められていますが、専門的な知識が必要ですので、素人にはなかなか適切な負担割合なのかを判断することは難しいと思います。
そこで、ぜひ利用して欲しいのが、
- 敷金鑑定士
- 敷金診断士
といった敷金問題に関する専門家です。
敷金鑑定士や敷金診断士に依頼する
「敷金鑑定士」や「敷金診断士」という職業は、一般的にあまり知名度は高くありませんが、近年の敷金トラブル増加に伴い全国的に急速に広まっている職業なのです。
簡単にいえば、借金問題や交通事故のトラブルなどで弁護士や司法書士を頼るように、敷金問題であれば、専門的な知識を持っている「敷金鑑定士」や「敷金診断士」に頼るのが1番良い方法なのです。
もちろん、みなさんが知らないだけで、不動産業界の人であれば良く知られている存在ですので、「敷金鑑定士」や「敷金診断士」に依頼すると、不動産会社にしてみれば面倒なのが出てきたなというイメージでしょう。
依頼料金もそんなに高くはありません、地域による料金格差はあるかもしれませんが、敷金精算の適正な見積り依頼であれば1Rの賃貸物件で7千円〜1万くらいだと思います。
別途料金を支払えば大家さんに対する内容証明なども代筆してくれますので、
- これから退去予定がある方
- すでに敷金トラブルを抱えている方
様々なケースに対応してくれますので、検討してみては如何でしょうか。
ここまでして、それでも解決しない場合は、最悪法廷で争うことになりますが、法廷闘争については、別記事の「敷金返還で大家側と争う場合の注意点、費用について」で詳しく説明していますので参考にしてください。